工業地域の実例
工業地域とは、大規模な工場が立地していて、工業を中心とした用途の地域です。
危険性や環境悪化の恐れが大きい工場や、大量の危険物を扱う貯蔵施設も建てる事ができます。
その様な地域のため、学校や病院を建てる事はできませんが、住宅や店舗などは建築可能です。
工業地域がどのような地域なのか、わかりやすく解説します。
工業地域は主に工業の業務の利便の増進を図る地域。どんな工場でも建てられる。住宅・店舗は建てられる。学校・病院・ホテル等は建てられない。 例えば、大規模な工場の隣に社員寮やスーパーがあるような状態など。
※ウィキペディアより引用
工業を中心とした地域なので、課せられている制限はひじょうに緩くなっています。
建ぺい率(%) | 50、60 | |
容積率(%) | 100、150、200、300、400 | |
絶対高さ制限 | ― | |
道路斜線制限 | 適用距離 | 20m 、25m、30m、35m |
勾配 | 1.5 | |
隣地斜線制限 | 立ち上がり | 31 |
勾配 | 2.5 | |
北側斜線制限 | 立ち上がり | ― |
勾配 | ― | |
日影規制 | 対象建築物 | ― |
測定面 | ― | |
規制値 | ― | |
外壁後退 | ― |
高度地区、防火地域・準防火地域・法22条などは各自治体により制限内容が異なります。
工業地域の制限は、準工業地域で課せられていた日影規制の制限が無くなっています。
工業の発展が中心で、近隣への日当たりなどは考慮しなくてもよい地域になっています。
各用途地域ごとに建築できる建物と建築できない建物があります。
工業地域では次の一覧表のようになっています。
建築物の用途 | 建築の可否 |
住宅・共同住宅 | ◯ |
兼用住宅 | ◯ |
幼稚園・小学校・中学校・高等学校 | × |
図書館 | ◯ |
神社・寺院・教会 | ◯ |
老人ホーム・保育所・身体障害者福祉ホーム | ◯ |
公衆浴場・診療所・保育所等 | ◯ |
老人福祉センター・児童厚生施設 | ◯ |
巡査派出所(交番)・公衆電話所(電話ボックス) | ◯ |
税務署・郵便局・警察署・保健所・消防署 | ◯ |
大学・高等専門学校 | × |
病院 | × |
店舗や飲食店の部分が2階以下で床面積の合計が150㎡以内のもの | ◯ |
店舗や飲食店の部分が2階以下で床面積の合計が500㎡以内のもの | ◯ |
上記以外の物品販売業を営む店舗や飲食店(10,000㎡以内) | ◯ |
床面積の合計が10,000㎡を超える店舗や飲食店 | × |
上記以外の事務所等 | ◯ |
ボーリング場・スケート場・プール・バッティングセンター等 | ◯ |
ホテル・旅館 | × |
マージャン屋・パチンコ屋 | ◯ |
カラオケボックス | ◯ |
自動車車庫(2階以下かつ300㎡以下) | ◯ |
自動車車庫(3階以上または300㎡超) | ◯ |
倉庫 | ◯ |
営業用倉庫 | ◯ |
自動車教習所 | ◯ |
劇場・映画館(客席部分の床面積の合計が200㎡未満) | × |
劇場・映画館(客席部分の床面積の合計が200㎡以上) | × |
キャバクラ・キャバレー・ナイトクラブ | × |
ソープランド・ヌードスタジオ等 | × |
自動車修理工場(50㎡以下) | ◯ |
自動車修理工場(150㎡以下) | ◯ |
自動車修理工場(300㎡以下) | ◯ |
工場(50㎡以下・危険性や環境を悪化させる恐れが非常に少ない) | ◯ |
工場(150㎡以下・危険性や環境を悪化させる恐れが少ない) | ◯ |
工場(150㎡を超えるまたは危険性や環境を悪化させる恐れがやや多い) | ◯ |
工場(危険性が大きいまたは著しく環境を悪化させる恐れがある) | ◯ |
危険物の処理・貯蔵施設、量が非常に少ない施設(ガソリンスタンド) | ◯ |
危険物の処理・貯蔵施設、量が少ない施設 | ◯ |
危険物の処理・貯蔵施設、量がやや多い施設 | ◯ |
危険物の処理・貯蔵施設、量が多い施設 | ◯ |
工業地域ではどんな工場を建ててもOKになっているので、危険性や環境の悪化の恐れがあります。
そのため、学校や病院、ホテルなどを建てる事はできません。
住宅や店舗の建築は可能です。工場に併設された社員寮などであれば仕方ありませんが、この地域に普通に家を建て、居住する事はかなり熟慮が必要です。
工業地域の実例写真
工場が建ち並んで、かなり騒音もあります。そんな中に、写真奥には2階建ての戸建て住宅が何件か見受けられます。
工業地域ではスーパーなどの店舗や飲食店の建築は認められていますが、工業地域に指定されるエリアは市街地の中心部から離れ、駅からも遠く、あまり人が集まる場所ではありません。
したがって、工場の従業員の昼食を賄う飲食店がいくつかある程度です。
学校の建築は不可ですし、周辺には生活に必要な施設がほとんど無く、利便性は著しく悪いでしょう。
昼はもちろん夜間も工場が稼働して、大型トラックが行き来する事でしょう。その騒音や振動でに悩まされる事になるかも知れません。
静かな住環境を望む事はまずできません。
工業地域で認められている工場の記載には「危険性が大きいか又は著しく環境悪化の恐れがあるもの」と書かれています。
もしかしたらすぐ近くの工場が爆発して、破片が屋根を突き破ってきたり、排気ガスで知らない間に健康を害していたり、なんて事もあるかも知れません。
工業地域は工場の建設を促進させる事を目的とした地域なので、人が住むことは考慮されていません。
たまにポツポツと戸建て住宅が建っているのを見かけますが、周りは大きな工場ばかりなので、異質なものが紛れ込んでしまった感じがして、先の実例写真の様にひじょうに違和感を感じます。
大きな工場が建っていた跡地に、大規模マンションが建つような事がよくあります。土地の価格が安く、販売価格が抑えられるからですが、値段優先でマイホームを手に入れたいという人は、工業地域のデメリットを踏まえ、よく考えた上で判断すると良いでしょう。
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