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自分の死後、誰にどの財産をどれだけ与えるのか書き残しておくのが遺言書です。
遺産分割でトラブルにならない様にするため、あるいは法定相続人以外の人へも財産を分配するため、意思表示をしておくのが遺言書の主な目的です。
遺言書の方式には主に自筆証書、公正証書、秘密証書の3種類があり、それぞれ効力は同じですがメリットとデメリットがあります。
ここでは遺言書についてわかりやすく解説します。
遺言書の目次
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‥‥第二・第三順位
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遺留分とは何か
‥‥相続人に最低限保証された取り分
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‥‥いくら相続税がかかる?
遺言の効力が生じるのは、基本的に遺言者が死亡した時からになります。
もし、遺言に停止条件が付いている場合は、条件が成就した時からになります。
例えば「孫が成人したら土地と建物を遺贈する」という条件があれば、孫が成人してから遺言の効力が生じる事になります。
民法 第985条
では、遺言書の効力とはどのようなモノなのでしょうか?
遺産相続では被相続人の意思を尊重するのが原則なので、生前に財産の分配について遺言書を残していれば、法定相続よりも優先されます。
もし、遺言書が無ければ、相続人全員で遺産分割協議をして、それぞれの相続人が法定相続分の権利を主張できます。
しかし、遺言書があれば、たとえ自分の取り分が法定相続分を下回っていたとしても、遺留分を侵害していない限り文句は言えません。
遺言書を無効にする事もできますが、その場合は法定相続人と受遺者(相続人ではないが遺言書により遺産を受け取る人)の全員が合意しなければならないので、結構困難です。
遺言書は法定相続よりも優先されるだけの効力を持っているので、主に次の目的のために作成されます。
例えば、小学生の子が財産を持っていたとして、遺言を残したとしても有効ではありません。
それは、年齢が低いと、充分な判断能力が備わっていないからです。
では、いくつから判断能力があるとされるのか?
民法では遺言の年齢制限について次のように定められています。
十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
民法 第961条
遺言が有効となるのは15歳以上となっています。
もし、15歳は未成年者だからと言って親が遺言書を代筆したとしたらどうなるか?
それは無効になってしまいます。
物品の売買をする場合、未成年者を保護するという観点から、15歳だと親権者の同意を得なければなりません。しかし、遺言の場合は15歳以上であれば本人の意思だけでOKなのです。
その理由は2つ
民法第886条で次のように定められています。
- 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
- 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
民法 第886条
つまり、原則として被相続人が亡くなった時点で生存していない人は相続できません。
しかし、胎児はまだ生存していませんが、相続する事ができます。
ですから、相続人ではない胎児にも、遺言で遺産を与える事ができます。
例えば、息子の嫁が孫を妊娠していたとします。
しかし、主治医から余命宣告を受け、自分の死後に孫が産まれてくるような場合 、胎児である孫は相続人ではありませんが、遺言書を作成して遺産を与える事ができます。
※胎児は相続税が200万円控除されるので、息子に直接相続するよりも有利になります。
詳しくはこちら→未成年者控除
民法第1022条で次のように定められています。
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
民法 第1022条
遺言を公開したとしても、いつでも何度でも撤回できます。
ですから、遺言書に胎児である孫に財産を分けると記載したものの、後で「やはり胎児胎児の孫ではなく、愛人に分ける事にしよう」と思い直したとしたら、その遺言書を撤回して、新たに遺言書を書き直しても、何ら問題はありません。
もし、複数の遺言書があったとしたら最も新しい遺言書が有効となります。
遺言が効力を生じるのは遺言者の死後なので、その時には遺言者の意思表示を確認する事はできません。
ですから遺産分割の際に混乱が生じないよう、遺言書は法律で定められた方式に則って正しく作成しなければなりません。
もし、不備があれば遺言書は効力を失ってしまいます。
遺言書の方式として一般的なのは普通方式遺言で、普通方式遺言には3種類の方式があり、それぞれメリットとデメリットがあります。
最も一般的な遺言書で、被相続人が自分で作成する遺言書です。
紙にペンで遺言を書き、捺印すればいいだけなので、費用も掛からずお手軽です。
ただし、内容が曖昧であったり、書き間違えなどで、遺言書が無効になってしまう可能性があります。
保管方法 | 被相続人が自分で保管 あるいは法務局で保管 |
費用 | 不要(0円) |
証人 | 不要 |
家庭裁判所の検認 | 原則必要 法務局保管の場合は不要 |
公証人役場で作成する遺言書です。
相続財産が多額な場合は、公正証書遺言を利用するのが一般的です。
公証人が法律に則って作成してくれるので、確実に有効な遺言書を残す事ができます。
保管方法 | 原本は公証人 |
費用 | 公証人へ数万円~十数万円 |
証人 | 2人以上必要 |
家庭裁判所の検認 | 公証人が作成した文書なので不要 |
遺言書の内容を秘密にしたい。亡くなるまで誰にも知られたくない場合に作成する遺言書です。
公証人役場で作成手続きをしますが、遺言書の内容は公証人にも知られずに作成できます。
ただ、あまり利用される事はありません。
保管方法 | 被相続人が自分で保管 |
費用 | 公証人へ11000円+証人への支払い |
証人 | 2人以上必要 |
家庭裁判所の検認 | 必要 |
上記の3種類の遺言書の内、最も効力があるのはどれか?
実はどれも効力は同じです。
遺言書の有効性は種類で決まるのではなく、最も後で作成されたものだけが有効で、それ以外の遺言書はどの種類であろうと無効です。
民法第1004条で次のように定められています。
- 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
- 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
- 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
民法 第1004条
被相続人が亡くなって、遺言書を発見あるいは保管していた人が家庭裁判所へ遺言書を提出し、検認という手続きをします。
家庭裁判所が相続人立会いの下で遺言書を開封し、内容を確認する事で、遺言書の偽造を防ぐ事ができます。
検認は遺言書が有効か無効かを判断する手続きではありません。
相続がスムーズに行われるようにするための手続きです。
公正証書遺言の場合は既に公証人のお墨付きをもらっているので、家庭裁判所による検認は必要ありません。
なお、自筆証書遺言書においても、法務局で遺言書を保管してもらう事で、検認の手続きは必要がなくなります。(2020年7月10日より)
上記にてご紹介した3種類の普通方式遺言の他の遺言方式があります。
何らかの理由によって、普通方式遺言が不可能な場合の遺言方式です。
病気などにより死亡の危急が迫った人の遺言方式になります。
船舶遭難者の遺言方式になります。
伝染病などにより行政が交通を断ち、隔離された場所にいる人の遺言方式になります。
刑務所に服役している人や災害地の被災者もこの遺言方式をする事が可能です。
遠洋漁業や豪華クルーズ船などの船舶に乗っていて、陸地から離れている人の遺言方式です。
ここで紹介した4種類の特別方式遺言について、民法第983条で次のように定められています。
第976条から前条までの規定によりした遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになったときから6ヶ月間生存するときは、その効力を生じない。
民法 第983条
遺言書さえ残しておけば、その通りに遺言者の意思表示が実行されるのでしょうか?
民法第1024条に次のような記載があります。
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
民法 第1024条
遺言は何度でも撤回できますし、その都度、遺言書は何度でも書き直せます。
そして、常に最新の遺言が有効となります。
ただし、民法第1024条によれば最新の遺言書を作成して保管してあったとしても、次のような場合、遺言書は撤回されたとみなされます。
法律では遺言者の最後の意思を尊重することになっています。
例えばAがBに土地を相続させるという遺言書を作成したとします。
しかし、その後にAはその土地をCへ譲渡してしまったとしたらどうなるか?
その場合、遺言書に記載された内容よりも、Cにその土地を所有させる事が、Aの最後の意思とみなされ、遺言書は撤回される事になります。
仮に、その遺言書に
「これが最後の遺言であり、撤回することはない」
と記載されていたとしても、撤回したことになってしまいます。
たとえそれが、自筆ではなく、正式に公証人役場で作成してもらった公的文書の遺言書であっても、 土地を譲渡したという最も新しい意思表示の方が有効となります。
遺言書に法定相続人ではない他人に、「財産の一部を遺贈する」と書いてあったらどうなるのでしょうか?
もちろん、遺言により他人へ財産を遺贈する事はできるのですが、状況によっては遺贈できない場合があります。
Aが最後の遺言書を残して死亡。
その遺言書には、A所有の土地と建物をCに遺贈すると書かれていた。
そして、Aには息子のBがいる場合、どうなるか?
遺言書が無ければ、相続人であるBが土地と建物を譲り受ける事になりますが、その様な遺言書があれば、土地と建物はCのものになります。
ただし、それでもCの状況次第でBが相続する事になります。
息子のBがその土地と建物を相続する事になります。
※Cは承認も放棄も自由に選択できますが、一度どちらかの意思表示をしたら、後で勝手に撤回することはできません。
息子のBがその土地と建物を相続する事になります。
ちなみにCに子供がいたとしても、その子供が代わりに相続する事(代襲相続)はできません。
条件とは、例えば「Cが成人したら その土地と建物を遺贈する」と言うようなもの。
当然、条件が揃ってから遺言の効力が生じます。
ただし、条件が揃う前にCが死亡した場合は遺言は無効になり、Cに子供がいたとしても、その子供が代襲相続することはできません。
遺言によって、法定相続人以外の他人にも遺産を遺贈させる事ができます。では赤の他人に全財産を遺贈すると遺言書に書いてあったらどうなるか?実は法定相続人には最低限保証されている遺産の取り分があり、それを遺留分と言います。「次のページ」で遺留分について、わかりやすく解説します。
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