その時、私は34歳。
勤めていた会社が突然「住宅事業を始める」と言い出し、
私をはじめとする、社内の住宅建築のド素人が3人集められました。
なんにも分からない状況で、
社長の親戚の家を建てる事になったのです。
とりあえず、社長の知り合いの工務店から
家づくりのレクチャーをしてもらう事に‥‥。
しかし、ド素人にレクチャーするなんて無茶な話しです。
ある日、その工務店のIさんが会社まで来てくれて
家を建てる手順を説明してくれる事になったのですが・・・。
「まず、丁張り(チョウハリ)をした後に‥‥」
「チョウハリってなんですか?」
私のその言葉を聞いた瞬間に、
Iさんの目が点になっているのが分かりました。
ちなみに丁張りについてはこちらをご参照ください
→丁張りとは
【Iさん】
いやっ、丁張りというのは、建物の位置を出すことで、
まず、周囲に杭を打って‥‥
【私】
杭ってどんな杭を?
【Iさん】
45ミリ角で、長さは1メートルぐらいで‥‥
【私】
それはプラスチックですか? 木ですか?
どこで手に入れるんですか?
【Iさん】
木で、木材屋さんに行けば束になって売ってます。
それで、その杭を貫板(ヌキイタ)で固定して‥‥
【私】
ヌキイタってなんですか?
【Iさん】
厚さ9ミリ、幅が90ミリの板で‥‥
【私】
そのヌキイタを使って、どうやって杭を固定するんですか?
‥‥中略‥‥
【私】
建物の位置を出すのには直角を出さなくてはいけませんよね。
直角を出すのには、どうするんですか?
【Iさん】
それは、345(サシゴ)で‥‥
【私】
サシゴってどんな道具ですか?
【Iさん】
だ・か・ら、サシゴは道具じゃなくって‥‥
ちなみに345(サシゴ)とは何かというと、
例えば辺の長さが3m、4m、5mの三角形を作ると、
直角三角形になるのです。
大昔から大工さんは
ピタゴラスの定理を知らなくても、
345(サシゴ)で直角が出せる事を知っていたんですね。
建築の世界では「1+1=2」と同じぐらい当たり前の話ですが、
ズブのド素人が知るわけありませんよね。
ちなみにサシゴについて詳しくはこちら
→サシゴとは
話しは元に戻って‥‥、こんな状態ですから、
住宅建築の入り口である、丁張りの話しだけで
1日が終わってしまいました。
Iさんは自社に戻ると、
「あいつらはダメです。丁張りすら知らない‥‥」
と、呆れて言っていたとか‥‥。
それ以来、2度と私達の前に現れる事はありませんでした。
彼らのレクスチャーが唯一の頼みの綱でしたが、
もはや当てにできなくなり、どうしたら良いのか‥‥。
これから先の展望が見えなくなり困惑しているところへ
更に追い打ちをかける出来事が‥‥。
私と一緒に住宅事業を立ち上げるはずの
営業担当者がギブアップして、なんと、会社を辞めてしまいました。
しかも、現場担当者は体調を壊し入院、
長期療養となってしまったのです。
実質、実務をこなさなければならない人員は
私一人だけに‥‥。
当然、事を上手く運んで行ける訳がありません。
私は数々の大失敗を重ねることになるのでした。
この続きは、また後日。
レクスチャーではなく レクチャーですよね?
通りすがりさん、ありがとうございます。
早速直しておきます。