私は京都に安住の地を得て、
これまでに身に付けた、製品開発のスキルを活かして、
仕事も順調でした。
私の人生の物語は、
これで、めでたし、めでたしで終わるはずだったのですが‥‥。
当時勤めていた会社は、京都の小さな製造メーカーでした。
ところが、私がその会社に転職してから3年ほどして、
社長が突然、「住宅事業を立ち上げる」と言い出したのです。
そして、なぜか私がその事業を立ち上げる事に‥‥。
でも、私はもちろんですが
会社自体、住宅建築のノウハウは皆無。
本業とは全く畑違いの事業です。
普通なら、どこかの工務店やハウスメーカーから
住宅建築のプロフェッショナルを連れてきますよね。
ところが、社内の人員だけで
事業を立ち上げると言うのです。
私は設計を担当‥‥
理由は工業製品の設計ができるから。
‥‥そんな馬鹿な。
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私以外にも、営業担当と現場担当が招集されました。
営業担当者は社内の営業部から‥‥
でも、一般消費者相手の営業はした事がありませんし、
もちろん、住宅建築の知識もありません。
現場担当者は、過去に工務店に勤めた経験があるらしいのですが、
それも1~2年程度で、なんのスキルも持っていません。
そんな状態で、住宅事業を立ち上げるなんて
あまりにも見通しが甘すぎます。
工業デザイナーとして順調に歩んでいた私でしたが
またしても、人生に暗雲が立ち込めてきました。
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まず、最初の1棟目は社長の親戚の家でした。
難易度も低く、初めての物件としては
まずまずなのですが、こっちはズブのド素人。
それまで私は、大工さんをはじめとする職人さんたちは
工務店の社員だと思っていました。
ところが、職人さんたちは皆、自営業者だと知ってビックリ。
そんな職人さんたちを、どう手配したらいいの?
そもそも、大工さん以外にどんな職人さんが必要なのかも分からない。
必要な建材は職人さんが手配するの?
それともこっちで手配するの?
建材をこっちで手配するとしたら、どこから仕入れたらいいの?
寸法は尺貫法が使われているし、
専門用語だらけで、さっぱり訳が分からない。
その時、私は34歳。
その年になって、
全く未知の世界に足を踏み入れなければならないとは‥‥。
この先の、悪戦苦闘の様子は、また後日。