当社が家づくりのサポートをしている大阪の現場で気密測定をしました。
結果は驚きのC値0.05。
家全体で3cm角程度の隙間しかない事になります。
断熱は発泡ウレタンの吹付で、屋内側に気密シートを張ってます。
サッシはYKKの樹脂サッシです。
気密測定の仕組み
今回の測定結果がこちら。
気密測定はどの様に測定するのかというと、
しっかり戸締りをして、ファンで空気を外へ出して屋内の空気を負圧にします。
その際、屋内と屋外の気圧の差と外へ出る空気の流量から隙間の量を推測します。
外へ出す空気の量が少ないのに、屋内外の気圧の差が大きければ家の隙間が少ない事になります。
逆に大量の空気を外へ出しているのに、屋内外の気圧の差が小さければ家の隙間が多い事になります。
こちらの写真は屋外に出したセンサー。
ピンク色のチューブは屋外の気圧を測るためのもので、風の影響を受けない様に真鍮のTの字型の部材が付いています。
黒い方は温度センサー。
計測した数値に温度補正をして結果を出します。
実際に気密測定をしている様子を下記の動画でご覧になれます。
20年前の住宅の気密性
20年前、私は工務店で現場監督をしていました。
そして全棟気密測定をしていました。
それも断熱工事後と竣工後の2回。
当時、そんなことをしている住宅会社は京都では数えるほどでした。
大手ハウスメーカーに至っては皆無でした。
そんな状況ですから、どうしたら気密性が高くなるのか誰もわかりません。
1件1件、手探りで気密工事をしていました。
最初の頃、C値は2.0を下回るのがやっとでした。
でも次第にどこに隙間ができやすいのか分かってきて、数値が良くなってくると大工さんもやる気が出てきて、C値は1.0を切る様になり、最終的には0.5を出せる様になりました。
当時はC値0.5を出せるという事が自慢でしたが、先日は10分の1の0.05。
今となってはお話になりませんね。
なぜ気密性が必要なのか?
◆高気密にすると何が良いのか?
よく言われるのが「隙間から冷暖房した空気が逃げてしまう・・・」
でも、C値が1.0以下であれば、隙間から逃げる熱量は大差ありません。
熱量より問題だと思うのはフィルターを通らずに家の中に入ってくる空気です。
◆工事途中と完成時で気密性が違う
実は工事途中で測定した気密性と完成してから測定した気密性は違います。
過去の私の経験では工事途中でC値が1.5程だった場合、完成した時にはC値が1.2でした。
それは壁にクロスが貼られたことで気密性が向上するのだと思われます。
しかし工事途中でC値1.0であれば、完成時も1.0でした。
それはクロスを貼って気密性が向上するのと、エアコンやレンジフードによって開けられた穴が相殺されているのでしょう。
工事途中でC値0.5であれば、完成時には0.8に低下しました。
それはクロスを貼ってもそれほど気密性は向上せず、エアコンやレンジフードで開けた穴の方が悪影響を与えているのでしょう。
これまでの私の経験から推測すると、もし工事途中でC値が0.1という超高気密だったとしたら、おそらく完成すると0.4~0.5といった感じになるでしょう。
◆C値1.0と0.5の差
では完成した時のC値が1.0と0.5ではどれだけの差があるのか?
もし延べ床面積40坪で、室内外の温度差が15℃。
そして屋外に2.4m/sの風が吹いていたとします。
ちなみに東京の年間平均風速は3.0m/s程なので、普段より弱い風になります。
以上の条件でC値1.0であれば隙間から1時間に40立方メートルの空気がフィルターを通らずに入ってきます。
40立方メートルというのは概ね10畳の部屋の気積ぐらいです。
24時間なら240畳。
アレルギー体質の人にとっては花粉や黄砂、PM2.5の流入をできるだけ抑えたいですよね。
もしC値が0.5であればフィルターを通らずに入ってくる空気の量はC値1.0に比べ、半分になります。
気密性についてのまとめ
よく工事途中で測定するC値は0.5で充分。0.5を下回っても意味がないという人がいます。
でも、工事途中でC値が0.2あるいは0.1でなければ、完成時に0.5にはならないでしょう。
高断熱高気密をウリにするのでしたら、気密性を追求するのは当然です。
追求するからこそノウハウが得られ、大工さんからの協力も得られ、自然と気密性が高くなっていきます。
高断熱高気密住宅にこだわる人は「C値が0.5を下回っても意味がない」と言っている住宅会社を選ぶと物足りないでしょう。
ただ、高断熱高気密だけが全てではありません。
私の個人的な意見としては最低限、断熱等級5はクリアしておくべきかとは思いますが、デザインセンスや自然素材、コスパ、耐震性など多様な価値観があってしかるべきかとは思います。